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皮膚マイクロバイオームが加齢変化に関わる

マイクロバイオームとはなんぞや?

2021年にコーセーからでた論文での話。

ちょっと前の話になりますね。

International Journal of Cosmetic Science (IJCS) に掲載され、

2021年に同誌に掲載された77論文の中で最も優れた論文として

「ベストペーパー賞」を受賞しています。

まあ、国際的に評価された論文ですよーってことさね。

 

Development of a skin microbiome diagnostic method to assess skin condition in healthy individuals: Application of research on skin microbiomes and skin condition

 

マイクロバイオームとは、ヒトの体に共生している微生物叢を丸っと含めた

遺伝情報のことで、ここでは皮膚に常在している細菌、菌類などまとめて

DNA解析したこのを指します。

分かりやすき言えば、肌の菌叢のゲノム解析をしたってわけ。

 

234名の女性のマイクロバイオームと肌状態を網羅的に解析することで、

皮膚マイクロバイオームの多様性が肌に与える影響を調べたものになります。

 

昨今、肌の常在菌にフォーカスした化粧品ってのがたくさん存在します。

善玉菌といわれる表皮ブドウ球菌を増やしてみたり、ニキビの原因になると

いわれるアクネ菌を抑えてみたりと。

しかしながら、そう単純な話ではなく、複数の菌が互いに複雑に絡み合っており、

よくわかってない部分が多々あるわけです。

 

この論文では、皮膚マイクロバイオームの多様性が高いグループと

多様性の低いグループに分類し、毛穴、肌のキメ、肌の明るさなどを

比べました。

 

結果としましては多様性の高いグループは

油分:少ない

毛穴:少ない

キメ:良い

ポルフェリン:少ない

加齢リスク:肌の明るみが失われる

 

菌叢の多様性が高いほうが、肌状態は良いのですが、

老化に伴い、肌がくすんでくる傾向にあるという結果になりました。

ポルフェリンはアクネ菌が生成する酵素で、

まあ、色々悪さをします。当然、少ないほうが望ましい。

 

他にも、コラーゲン量だとか、シワ、シミ、肌の弾力などを調べていますが、

それらには有意な差はなかったとのこと。

 

面白いのは、基本的には菌叢に多様性があった方が、

肌はキレイなのですが、老化に伴い、肌の明るさが失われていく傾向にあると。

逆に菌叢の多様性が少ない場合、肌状態は悪いけども、

加齢と肌の明るさには相関がなかったそうな。

 

この辺はどういうことなのか、謎ではあります。

糖化しやすくなるのか、老化タンパクが蓄積しやすくなるのか、

現時点ではわかりませんが、そういう傾向にあるのは確かなので、

対策することができるというわけです。

 

このような傾向をもっと調べていけば、将来的にはマイクロバイオームを

調べておけば、加齢による肌への影響がわかり、対策しやすくなる

のではないか?などといわれています。

 

 

今後は菌叢の多様性に応じて、その人にあったスキンケアを提案するような

サービスが展開されるのかな?知らんけど。

 

 

さて、この話で重要なことは、菌叢は多様性が高いほうが望ましいってことですが、

この菌叢の多様性の差が生まれるのは何故?

 

1つの可能性としては、殺菌剤の長期使用が関係していると思われます。

殺菌剤に耐性のない菌から淘汰されていき、逆に耐性のある菌が

幅を利かせることになるのではないかと。

 

特に、医薬品としてお医者さんから処方されたものを長期使用した場合、

これらは顕著に起こりうるのではないかと思われます。

実際、 そういう人は肌の調子が悪い人が多く、

その原因が菌叢の多様性の減少によるものであると考えられます。

 

逆に菌叢の多様性を増す手段があるのか?って話ですが、

何かの成分を使って・・・みたいなスキンケア的な手法では無理だと思われます。

 

まあ、方法は簡単で肌のキレイな人から、もらえばいいんですよ。

物理的な接触を繰り返せば、近い菌叢になります。

とはいえ・・・現実的には難しい話なのかもしれませんな。

 

便の移植なんてことが行われているので、肌の菌の移植ってのも

そう遠くない未来でやられているかもしれませんね。

 

 

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