クマムシの放射線耐性のしくみが明らかに

普通の生物が死ぬ放射線量の1000倍以上でも死なない理由

クマムシは緩歩動物に属する生物で、1対の目と4対の脚をもち、

1ミリにも満たない大きさになります。

耐久性がとにかく凄いことから、最強生物と呼ばれています。

その耐久性能は、

・100℃から-270℃(ほぼ絶対零度)まで耐えられる

・150℃でも数分間は生存可能

・真空から7万5000気圧まで耐える

・宇宙空間でも耐えられる

・水生生物にもかかわらず、極度の乾燥状態でも耐えれる

・飲み食いせずとも数カ月は耐えられる

・高線量の紫外線、X線、ガンマ線等の放射線に耐える

 

不死身なんじゃな?と思われる耐久性ですが、

Current Biologyにクマムシの放射線への耐性の仕組みが解明されたとの

論文が掲載されました。

 

The tardigrade Hypsibius exemplaris dramatically upregulates DNA repair pathway genes in response to ionizing radiation

 

ほとんどの生物が死滅してしまう放射線量の1000倍以上でも耐えれるクマムシですが、

その仕組みはわかっていませんでした。

放射線は生物の遺伝情報であるDNAを傷つけます。

重要な遺伝子だった場合は、生存が困難となり死にます。

また、DNAが損傷した細胞はアポトーシスされます。

アポトーシスを逃れたとしても、それはガン細胞となり、

生命の危機にさらされることになります。

 

DNAの損傷は生命の危機であり、普通の生物であれば1000回死んでる量の

放射線をたった0.5mmのクマムシが耐えれるってのは非常に不思議な話。

 

そのメカニズムが解明されれば、もしかしたら医療への応用ができるかも

しれないという期待のもと、研究が進められました。

 

その結果、クマムシは放射線が当たると、DNA修復遺伝子が非常に高いれべるで活性化される

ことが明らかとなりました。

簡単に言うと、ダメージを受けても片っ端から直していくっていう

力技だったと。

 

当然ではありますが、ヒトにもDNA修復遺伝子が存在しており、

ヒトに限らず、すべての生物で存在しています。

それらと比較して、遥かに高い活性を示したのだとか。

 

DNAの保持は生物の命題でもあります。

そういう意味では、クマムシのDNA維持力は

生物の理想形であるといえます。

 

なぜ、クマムシにこれほど高度なDNAの維持能力があるのかは、

まさに謎ではありますが、多くの生物にその能力が備わっていないのか

って理由はわかります。

 

生物の多様化を図るのであれば、突然変異は必要不可欠。

進化にも同様、突然変異は不可欠です。

ですので、DNA修復遺伝子をある程度不完全にしているというわけ。

その代償としてガンになるんですけどもね。

 

 

つまり、このクマムシのDNA修復メカニズムをヒトに組み込むことができれば、

ガンになることはなくなるってなわけ。

まあ、どうすればいいかってのは全然わかってないんですけどね。

 

1年前、ホントかウソかは知らんけど、クマムシのDNAをヒトの細胞に組み込んだ

ってな実験が中国で行われたって話があったけど・・・

核爆弾の放射能に耐えうる兵隊を作りたかったんだとか・・・

 

実際問題、DNAではなくて、DNA修復遺伝子が過剰に活性化する仕組みを

導入しないと意味はないよなー

 

 

クマムシの高い耐性をもたらす物質が解明されれば、

化粧品とかにも使われるかもなー

クマムシの乾燥耐性にはトレハロースが関係しており、

体内でトレハロースを生成するんだって。

トレハロースは保湿成分ではもはや定番ってところがありますし。

 

アンチポリューション成分としてはかなり魅力的ではあります。

紫外線も放射線と同様、DNAを損傷させるものですから、

全然無関係って話でもないです。

 

クマムシ幹細胞培養液とか、クマムシの遺伝子を組み込んだ酵母菌の

培養液とか、そのうちでてくるかもしれません。

ミドリムシを大ヒットさせたみたいに、クマムシで一攫千金を狙っている

って人は結構いそうですし。

 

 

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