· 

細胞の損傷を免疫に伝える物質

それがグルコシルセラミドなんだって

結構前の発表になるのですが、九州大学生体防御医学研究所と

大阪大学微生物病研究所の共同研究の成果の話になります。

2017年の4月に発表されています。

 

細胞が損傷すると、その細胞を取り除くために免疫系が

活性化されることが知られていましたが、その物質がなんなのか、

よくわかっていなかったんですよ。

 

その物質がグルコシルセラミドという糖セラミドだった!

ってな話です。要約すると。

 

グルコシルセラミドってのはセラミドにグルコース(糖)が結合したもので、

植物セラミドとして知られています。

コメセラミドもこんにゃくセラミドも桃セラミドもパインセラミドも、

グルコシルセラミドです。

セラミドは水にも油にも溶けにくいので、水溶性にするために

糖をくっつけて、体内を運搬させているため、自然界では

グルコシルセラミドの形で存在していることが多いです。

 

損傷した細胞ってのは、基本的に修復不可です。

不可逆的な反応なわけ。

で、いわゆる自然治癒ってのは、この傷ついた細胞を排除し、

そこに新しい細胞を作って補完をします。

 

損傷した細胞も「自分を処理してくれ」というシグナルを出し、

そのシグナルを受けて、免疫細胞が活性化し、その細胞を取り除くべく

活動を開始するわけです。

 

そのシグナル物質はなんなのか?ってのがよくわかっていなかったのですが、

それがグルコシルセラミドであると証明することに成功したわけです。

 

損傷した細胞からグルコシルセラミドが放出、

マイクロファージにあるmacrophage-inducible C-type lectin(ミンクル)

という受容体にグルコシルセラミドが結合することで、

免疫系が活性化します。

 

グルコシルセラミドは酵素によって常に一定量に保たれています。

まあ、セラミドになったり、他のスフィンゴ脂質になったりするわけ。

しかし、この分解酵素が正常に働かないと、グルコシルセラミドの蓄積が起こります。

 

グルコシルセラミドの蓄積が起こると、ゴーシェ病 やパーキンソン病 に

繋がることが分かっています。

疾患の症状として、慢性炎症を伴いますが、

これはグルコシルセラミドが免疫を活性化し続けるからなんだとか。

 

今後の研究としてミンクルの阻害剤がゴーシェ病やパーキンソン病の

薬となるのではないか?ってな方向に研究が進められています。

当時は動物実験を始めるってところだったので、成果がでていれば、

そろそろヒト試験が始まるのかな?

 

 

この話の興味深いところは、損傷した細胞は

シグナルとしてグルコシルセラミドを放出するが、

老化細胞は別のものを放出しているってこと。

また、アポトーシス(自然細胞死)にセラミドが関与しているっていう

2点ですかね。

 

細胞分裂には制限があって、だいたい60回くらいといわれます。

まあ、部位によって異なりますが。

限界を迎えた細胞は細胞分裂することができず、そうなった細胞を

老化細胞などと呼ばれます。

 

で、老化細胞は損傷した細胞と同様、自身の存在をアピールします。

目的は免疫細胞に処理してもらうためです。

放出しているのはサイトカイン、ケモカイン、成長因子、プロテアーゼなどなど。

グルコシルセラミド同様、炎症を誘発します。

 

厄介なのは、それらの物質が周りの細胞の老化を促進します。

まるで老化が伝染するかのようにね。

これはグルコシルセラミドのように分解されないので、

蓄積していくから起こるのだと考えられます。

 

セラミドがアポトーシスを誘導するって話ですが、

なんらかのストレスを受けるとスフィンゴミエリナーゼ1という酵素が

活性化されます。

その結果、細胞膜のリン脂質スフィンゴミエリンからセラミドが生成され、

セラミドの作用によってカスパーゼ群が活性化。

それらがDNA・ヌクレオソームを分解し、細胞核が崩壊することで

細胞が死にます。

 

アポトーシスで使われたセラミドを利用してグルコシルセラミドを作り、

それらを放出してるのかなーと。

 

まあ、これを化粧品に応用するのはちょっと難しいかなー

とは思います。

 

余談にはなりますが、グルコシルセラミドは化粧品で保湿成分

として使われていますが、高濃度で配合したら炎症を促すのかな?

化粧品で配合されている量は微量ですので、問題はないとは思いますが・・・

 

 

【関連記事】

セラミドを塗ると寿命が縮む?

フコイダンエキスの抗ガン作用

 

<<<前           次>>>