何度も掻くと増えるタンパク質NPTX2
九州大学大学院、岡山大学、ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループが、
かゆい皮膚を繰り返し引っ掻くことにより神経でNPTX2というタンパク質が増え、
それがかゆみ信号伝達神経の活動を高めることを発見しました。
ぶっちゃけ、かゆみが起こるメカニズムはよくわかっていないというのが現状。
蚊に刺されたら痒くなるのは、掻くという行為で毒を分散させる目的で、
痒みという信号を体が出し、掻くという行動をとるわけです。
この際に何が起きているのかというと、皮膚にある肥満細胞から
ヒスタミンが分泌されます。
このヒスタミンがヒスタミン受容体(H1型)にハマることで、
炎症を誘発し、痒みとなります。
その際にかゆみとして脳に伝達され、神経の末端から神経ペプチドと
呼ばれる神経伝達物質が放出されます。
で、この神経伝達物質が肥満細胞を刺激し、さらにヒスタミンの分泌を促します。
このループは何度も掻くことで加速します。
今回発見されたタンパク質NPTX2は、神経ペプチドのことなのかなー
と思ったのですが、それと別のものみたい。
実際にはかなり複雑な反応が起こっているようで、
神経ペプチドも1つではないそうな。
抗ヒスタミン剤があれば、痒みの問題は解決しそうですが、
そうなっていないので、痒みのメカニズムがよくわかってない
ってことに繋がってくるわけです。
で、今回の研究で、その一部が明らかになった、という話。
行った実験は慢性的に炎症を起こすようにしたマウスを使用。
遺伝子組換でアトピーにしたマウスですね。
皮膚から痒みのシグナルを脳へ送る脊髄神経の活性を観察し、
皮膚と脊髄をつなぐ感覚神経でNPTX2というタンパク質が
関与していることを明らかにしたわけです。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=658x10000:format=jpg/path/s3b67276d0eccefb9/image/i0089e3311b37bbcc/version/1652136713/image.jpg)
NPTX2を増やすと、痒み信号伝達神経が活発になり、
逆にNPTX2を無くすと活動が低下し、痒みも軽減するという
結果になりました。
NPTX2は遺伝子のコードが解明されているので、
そういったマウスを作ることが可能だったわけ。
NPTX2が神経で増えるのを抑えるような化合物、
あるいはNPTX2の作用を阻害するような化合物が見つかれば、
アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などで生じる慢性的なかゆみに
有効な治療薬の開発につながることが期待されます。
もしかしたら、アトピーの画期的な薬ができるかもしれません。
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