新型コロナウイルスの新薬
米食品医薬品局(FDA)は、製薬会社メルクが開発した
新型コロナウイルス感染症の飲み薬「モルヌピラビル」について、
11月30日に緊急使用許可を審議すると発表。
作用機序がちょっと面白かったのでご紹介。
モルヌピラビルはインフルエンザの治療薬として開発された、
抗ウイルス薬です。
RNAウイルス全般に効果があるので、当然新型コロナウイルスへの
効果が早期に検討されていたわけですが、ようやく認可される運びと
なったわけです。
なんか政治的なごたつきで遅くなったみたい。
薬剤関連は利権が大きく絡むからなー
モルヌピラビルは、ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することで、
ウイルスの増殖を阻害します。
RNAポリメラーゼはRNA合成酵素のことで、
RNAウイルスは遺伝情報をRNAで保持しており、
その情報を転写するときに必要となる酵素です。
つまり、遺伝情報を読み取れないようにしてしまうことで、
増殖できないようにするわけです。
で、どうやってRNAポリメラーゼを阻害するのかというと、
この酵素をコードしているRNAを変異させるわけです。
この薬剤は、体内でシチジンに類似したリポヌクレオチドアナログになります。
RNAはヌクレオチドに塩基がくっついたもので、塩基は4種類あり、
そのうちの1つに似た形になる、分かりやすく言えば、RNAを構成する
物質の偽物になると考えてもらえばよいかと。
ウイルスが増殖するとき、この偽物を取り込ませ、
偽物が入った部分は読み込み不能となるわけです。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=567x10000:format=png/path/s3b67276d0eccefb9/image/i02d0a207f2025a70/version/1634859314/image.png)
まあ、こんな感じになるわけ。(配列は適当)
C(シチジン)の部分にダミー(偽物)が入り込んで
遺伝情報を壊してしまうというわけ。
当然ではありますが、RNAポリメラーゼはRNAウイルスにとっては
必須な部分ですので、RNAウイルス全般に効果があるというわけです。
モルヌピラビルはRNAウイルスには効果がありますが、
DNAウイルスには効果がありません。
理由は簡単で、DNAとRNAでは情報セキュリティに雲泥の差があるわけ。
まあ、RNAのセキュリティがザルってことです。
生存戦略上、RNAウイルスは変異することを良しとしています。
高い確率で変異することで、宿主の免疫システムを躱すことができるからです。
コロナウイルスも変異株がどんどんでてきてるっしょ?
そのため、変異してもそれを放っておくわけです。
それを逆手にとったのがこの薬剤というわけ。
つまり、真核生物である人には作用しないとも言えます。
一応、今のところは副作用はほぼないとされています。
効果のほどは、重症化するリスクを50%ほど抑えたとのこと。
早期に投与できるかがカギとなるようです。
早ければ早いほうが、効果が高いわけ。
症状がでて4日以内が望ましいとのこと。
新型コロナウイルスの脅威は、治療薬がないってことで、
治療薬ができれば、その脅威は激減するわけです。
薬渡して、家でおとなしく寝てろってできるわけ、
医療現場、患者共に負担が減ります。
まあ、アメリカで製造されるわけですから、
日本で入手できるかはわかんないですけどね。
ワクチンのように、世界中でこの薬を手に入れるために
裏で色々動いているみたいですが、日本は動いているのかな?
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