アトピーの皮膚バリア機能形成に関わる因子「KPRP」

アトピーの遺伝的要因を見つけたってことかな

ロート製薬と東京大学との共同研究による発表になります。

アトピー性皮膚炎の皮膚バリア機能形成に関わる因子KPRPを発見し、その機能を解明したと。

 

内容は米国研究皮膚科学会と欧州研究皮膚科学会発行の学術誌

「Journal of Investigative Dermatology」(オンライン、2019年3月21日付)で

すでに掲載されています。

 

うん、結構前の話だな。

Keratinocyte Proline-Rich Protein Deficiency in Atopic Dermatitis Leads to Barrier Disruption

 

 

角層バリア機能の形成に関わる因子「KPRP」とは、

Keratinocyte Proline Rich Proteinの略となります。

ケラチノサイトのプロリンを豊富に含むタンパク質をコードしているってことかな?

 

アトピーの重症度とKPRP遺伝子の一塩基多型との相関を解析した結果、

rs4352920遺伝子座にてTTの遺伝子型を持つ人が、

健常またはADが軽症の患者では29%だったのに対し、

中程度あるいは重度のアトピー患者は50%だったことがわかりました。

 

また、χ2乗検定では、TT遺伝子型を持つ人とアトピー重症度は有意に相関しており、

その重症化リスクは2.52倍にも上るそうな。

 

KPRPをコードしている遺伝子の塩基配列を調べたわけです。

塩基配列ってのはATCGの4つの塩基が3セットで1つのアミノ酸を

コードしています。

要するに、ATCGで4文字の並びを調べた結果、

特定の部分がTTとなっているとアトピーのリスクが上がるってのが分かったってこと。

おそらく、アミノ酸1個が異なるだけで、多大な影響がでるということ。

 

χ2乗検定は・・・習ったけど忘れたわ。

統計的検定法の1つですが、

まあ、統計的にもKPRPの特定部がTTになっていると

アトピーになりやすいってことが言えますよーって話。

 

 

次に、健常皮膚とアトピー患者の皮膚でKPRPの発現を確認したところ、

アトピーの疾患部位ではKPRPの発現が有意に低下していることがわかりました。

 

続いて、アトピーの疾患部の炎症に関与するIL-4、IL-13、インターフェロンγを

ヒト表皮ケラチノサイトに添加すると、KPRP遺伝子が濃度依存的に発現低下することが確認されました。

 

さらに、KPRPが人の健常皮膚の角層直下にある3層の顆粒層のうち、

第2層目に一定間隔で局在すること、KPRPが細胞接着に関わる構成因子と

相互作用があることも分かりました。

 

えーと、どういうことかと言うと、

・アトピー疾患部でKPRPが少なくなっている

・炎症下ではKPRPの産生が低下する

・KPRPが細胞同士をくっつけるのに一役買っている

ってことかな。

 

逆にいえば、アトピーでも疾患部でなければKPRPが存在している、

炎症が治ればKPRPが増えるとも言えるわけです。

 

おそらくはKPRPのノックアウトマウス(KPRP遺伝子を壊したネズミ)も

作成していると思われ、それによってアトピーの発症が確認されているのでは

ないかと。

 

で、KPRP遺伝子の一部がTTの場合は、それが直接なのか間接的なのかは

わかりませんが、炎症を起こしやすくなっているので、

アトピーになりやすいのではって話だと思われます。

 

このKPRPがアトピーの重度化に関わっているということが示唆されたわけで、

この辺にアプローチすることで、アトピーの重度化を防ぐことが

できるのでは?との期待がよせられるわけでね。

 

KPRPを物理的に投入するのか、KPRP遺伝子を活性化させるものがあるのか、

ほかの手段が用意されているのか・・・

ちょっとわかりませんが、とりあえず炎症を止めろってことは

間違いないかなーと思った次第です。

 

 

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