皮膚のバリア機能に必要不可欠な新しい脂質代謝酵素の発見
表皮角化細胞(皮膚の一番外側の細胞)が作り出す特殊な酵素が
皮膚のバリア機能に必須の脂質成分であるアシルセラミドの生合成に関わることが
初めて明らかにしました。
(公財)東京都医学総合研究所、名古屋大、理化学研究所、米国バンダビルド大学
の共同研究によって明らかにされたことで、2017年3月1日に
英国科学誌『Nature Communications(ネイチャーコミュニケーションズ)』に
オンライン掲載されました。
肌のバリアに重要な成分であるセラミド。
その中でも特に重要な働きをしているのがアシルセラミドで、
何らかの要因でアシルセラミドの生合成や代謝が乱れると皮膚のバリア機能が損なわれ、
難治性皮膚疾患である魚鱗癬やアトピー性皮膚炎などの原因となることがわかっています。
アシルセラミドは一般的にはセラミド1、セラミド4、セラミド9に該当します。
セラミドはスフィンゴシンと脂肪酸からできていますが、
アシルセラミドは脂肪酸が非常に長いのが特徴で、超長鎖脂肪酸と呼ばれます。
この超長鎖脂肪酸は、細胞間脂質のラメラ層を突き抜けて存在し、
ラメラ層を強固なものとしています。


ただ、重要なのはわかっていましたが、アシルセラミドの生合成に
関わる酵素の存在が不明でした。
で、それが解明されましたよ~って話です。
結論はヒト魚鱗癬の原因遺伝子の一つとして報告されている特殊な酵素PNPLA1が
アシルセラミド合成酵素だったとのこと。
PNPLA1をコードする遺伝子に欠損があると、この疾患になるということはわかっていたのですが、
PNPLA1という酵素がアシルセラミド合成に関わっていたことを突き止めたわけです。
実験としては、PNPLA1遺伝子欠損マウスを作成。
PNPLA1を発現できないマウスは正常に生まれましたが、
出生直後から著しい皮膚異常を自然発症し、皮膚からの水分の喪失により
1日以内に死亡したそうな。
なんと、PNPLA1欠損マウスの皮膚は角質細胞間脂質が失われいたそうです。
これはアシルセラミド欠損マウスでも観察されている現象です。
で、アシルセラミドを調べた結果、全く検出されず、
代わりにその前駆体(ω-水酸化セラミド)が蓄積していたそうです。
さらに、損マウスから表皮角化細胞を取り出して試験管内で培養すると、
表皮角化細胞に特徴的な遺伝子の発現が著しく損なわれていましたが、
アシルセラミドを培地に添加すると遺伝子発現が回復しました。

この結果から、PNPLA1がアシルセラミドを生合成する酵素である
という結論を導き出したわけです。
今後の展開としては、PNPLA1が難治皮膚疾患の1つの指標になり得るということ、
また、この酵素の活性化、もしくはこの酵素の遺伝子の活性化を行うことで、
治療が可能になるかも・・・
そういった薬の研究が始まるかもしれませんね。
まあ、アシルセラミドを直接塗布することでの効果も確認されているわけですし、
現状、化粧品原料として使えますからね。
ただ・・・バカみたいな価格ですけどね。
今の為替だと1億円/kg行くかもしれません(笑)
あと、ハトムギエキスにアシルセラミドの合成を促す作用がある
といわれているので、ハトムギエキスから特定の成分を見つけることが
できれば、医薬品になるかもです。
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