農場育ちの子がアレルギーや喘息が少ない訳

秘密はエンドトキシンにあった

(農場のホコリに含まれるエンドトキシンが肺上皮細胞でA20の誘導によりアレルギーから守る)


経験的に、動物と一緒の環境、とりわけ酪農家では

アレルギーや喘息になる子供は少ないことが分かっていました。

その理由として、現代社会の生活が清潔すぎることに問題があり、

免疫のバランスが乱れていると言われてきました。


今回はそのメカニズムを解明したというような内容です。


さて、農場で育った子供は、同世代の子たちよりもアレルギーや喘息が

統計的に少ないことが分かっていましたが、その原因はわかっていませんでした。


農場のホコリに含まれるバクテリアにその理由があるのでは・・・

というのがこの論文の結論になります。



バクテリア、とくにグラム陰性菌にはエンドトキシン(内毒素)というものを

細胞壁にもっています。内毒素とは積極的に排出されない毒素のこと。

農場のホコリには菌の死骸が多く含まれ、エンドトキシンが多く含まれています。


このエンドトキシンは肺の細胞にあるA20という分子を活性化させます。

このA20はアレルギー反応を抑制する働きをします。


つまり、農場のホコリにはエンドトキシンが多く、

それを吸って育った子供たちはA20が活性化され、

アレルギーが起きにくいというわけです。


動物実験でも確認されており、エンドトキシンに2週間晒されたネズミは、

アレルギーを引き起こすダニに接触しても平気だった・・・とのこと。


ヒトでも同様のことが起こることが確認され、

予めエンドトキシンに晒すことで、アレルギーや喘息のリスクを軽減できるかも

しれないそうです。


しかしながら、現在、すでに喘息の人には効果がなく、

これはA20が肺に十分にないことが原因のようです。



残念ながら、すでに喘息を発症している場合には、

このエンドトキシンをつかった治療は全く効かないどころか、

悪化させてしまう可能性すらあります。


しかしながら、2~3歳までであれば、

将来的にアレルギーや喘息を予防できる手段にはなりえる可能性があり、

今後の展開が注目されます。


薬が開発されるのはずっと先になると思いますが、

小さいうちに農家で過ごす機会を与えておけば、

効果は十分あるそうです。


逆にいえば、今ほど清潔ではなかった昔にアレルギーや喘息がなかったのは、

当然といえば、当然だったのかもしれませんね。



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